契約結婚！一発逆転マニュアル♡

依舞稀の目の前にそびえ立つのは、一体何階建てであるか目視では直ぐに答える事ができないほどの高層マンションだった。

「でか……」

あんぐりと口が開き、目を丸くしてマンションを見上げている依舞稀の顔を見て、遥翔はクスリと笑った。

「ここが今日からお前の家だ」

遥翔からそう言われても、依舞稀にとっては現実味がなく、まるで夢でも見ているかのようだった。

車は地下駐車場に止め、そのままエレベーターに乗らずにマンション正面にやってきた。

カードキーで自動ドアを開けると、フロントがありコンシェルジュがいるではないか。

「え、なにここ。どこのホテル？」

「ホテルなわけあるか。早々に連れ込むような真似はできないだろ」

「早々に家に連れ込むのと何が違うんですか」

「響きと印象だ」

「今さらですね、それ」

契約違反を餌にして、人を脅し強引に嫁を釣り上げた人の言う言葉ではないだろうに……。

依舞稀は呆れてそう言った。

「いちいち突っ込んでくるな。おどおどしながら言葉もたどたどしかったお前はどこに行ったんだよ」

エレベーターに乗り、階数ボタンを押した遥翔は苦笑いした。

「控えめで小動物みたいな妻がよければ、よそを当たってくれると助かります」

「そんなのがよければ、わざわざお前に何度もプロポーズしないだろ」

捻くれた依舞稀の言葉に対してストレートに返す遥翔に、依舞稀の心がほんの少しときめいたような気がした。