どうしてこんなに焦ってしまうのだろう。
どうしてこのまま返したくないと思ってしまうのだろう。
「離してください」
「離したら出てくだろ」
「当然です」
「それは困る」
「それは知りません」
依舞稀は間違いなく、出張を話す関係性ではないと言ったことに対して腹を立てている。
それが確認できればこっちのものだと八神は言っていたが……。
大変なことになった。
早く確かめて見たくて副社長室を飛び出したものだから、この後どう切り返していったらいいのか、大事なところを確認していなかったのだ。
遥翔は今、自分が窮地に陥っているということだけは自覚していた。
これで言葉を間違ってしまったら、今度こそ本当に依舞稀との結婚は完全白紙どころか、もう二度と関わってもくれなくなるだろう。
依舞稀はなんだかんだ言って、意志も気も強い女なのだから。
遥翔は掴んだ腕を離すことなく、依舞稀を反転させて自分と向き合わせた。
「俺が言いたかったのは、『まだ』ってことなんだ」
依舞稀は黙って遥翔を睨みつけるように見つめた。
「まだってことは、今はってことで……。今後そうなればいいって意味で」
「おっしゃってる意味がわかりません」
「だから。俺だってお前に連絡したかったし、何度もしようと思ったんだよ。でも俺はまだお前に、いっほ踏み出すその権利を貰ってないだろ」
声を荒げるかのような必死の弁明に、依舞稀は呆気に取られてしまった。
どうしてこのまま返したくないと思ってしまうのだろう。
「離してください」
「離したら出てくだろ」
「当然です」
「それは困る」
「それは知りません」
依舞稀は間違いなく、出張を話す関係性ではないと言ったことに対して腹を立てている。
それが確認できればこっちのものだと八神は言っていたが……。
大変なことになった。
早く確かめて見たくて副社長室を飛び出したものだから、この後どう切り返していったらいいのか、大事なところを確認していなかったのだ。
遥翔は今、自分が窮地に陥っているということだけは自覚していた。
これで言葉を間違ってしまったら、今度こそ本当に依舞稀との結婚は完全白紙どころか、もう二度と関わってもくれなくなるだろう。
依舞稀はなんだかんだ言って、意志も気も強い女なのだから。
遥翔は掴んだ腕を離すことなく、依舞稀を反転させて自分と向き合わせた。
「俺が言いたかったのは、『まだ』ってことなんだ」
依舞稀は黙って遥翔を睨みつけるように見つめた。
「まだってことは、今はってことで……。今後そうなればいいって意味で」
「おっしゃってる意味がわかりません」
「だから。俺だってお前に連絡したかったし、何度もしようと思ったんだよ。でも俺はまだお前に、いっほ踏み出すその権利を貰ってないだろ」
声を荒げるかのような必死の弁明に、依舞稀は呆気に取られてしまった。

