契約結婚!一発逆転マニュアル♡

どうしてこんなに焦ってしまうのだろう。

どうしてこのまま返したくないと思ってしまうのだろう。

「離してください」

「離したら出てくだろ」

「当然です」

「それは困る」

「それは知りません」

依舞稀は間違いなく、出張を話す関係性ではないと言ったことに対して腹を立てている。

それが確認できればこっちのものだと八神は言っていたが……。

大変なことになった。

早く確かめて見たくて副社長室を飛び出したものだから、この後どう切り返していったらいいのか、大事なところを確認していなかったのだ。

遥翔は今、自分が窮地に陥っているということだけは自覚していた。

これで言葉を間違ってしまったら、今度こそ本当に依舞稀との結婚は完全白紙どころか、もう二度と関わってもくれなくなるだろう。

依舞稀はなんだかんだ言って、意志も気も強い女なのだから。

遥翔は掴んだ腕を離すことなく、依舞稀を反転させて自分と向き合わせた。

「俺が言いたかったのは、『まだ』ってことなんだ」

依舞稀は黙って遥翔を睨みつけるように見つめた。

「まだってことは、今はってことで……。今後そうなればいいって意味で」

「おっしゃってる意味がわかりません」

「だから。俺だってお前に連絡したかったし、何度もしようと思ったんだよ。でも俺はまだお前に、いっほ踏み出すその権利を貰ってないだろ」

声を荒げるかのような必死の弁明に、依舞稀は呆気に取られてしまった。