「そう……でした」
依舞稀はポツリと呟いた。
「確かに私みたいな一社員、が副社長の予定なんて知る必要性はなかったですね。申し訳ありませんでした」
ぺこりと頭を下げたけれど、どうして自分がこんなことで謝らなければならないのかと腹が立つ。
大体、自分が結婚しろとか突拍子もないことを言い出したんじゃないか。
婚姻届けまで突き出して、本気でサイン捺印させようとした。
挙句には毎日毎日プロポーズしに来て……いきなり姿が見えなくなったと思ったら出張って。
そんなこと前もってわかってたはずじゃないか。
だったら一言言ってくれてもよかったのに、黙って行ってしまった。
全くの無関係と言われればそれまでだけれど、まがりなりにも口説いてた女に対してそんな言い方する?
色々と考えてしまったら、沸々と怒りの感情が込み上げてきて、もうこの場にいたくないとまで思い始めてしまった。
「申し訳ありませんが、この後の業務も立て込んでおりますので、これで失礼いたします。今後一切副社長とは関わり合わないようにいたしますので、もうわざわざ来ていただかなくて結構です」
一気に捲し立てて依舞稀は席を立ち、扉に向かって歩き出した。
「待て待て待て!」
遥翔は慌てて依舞稀の背中を追うと、出て行かれるギリギリのところで腕を捕まえた。
「いたっ」
「ごめんっ」
遥翔はもう、副社長としての威厳も、イケメンのプライドも、全てをかなぐり捨てていた。
依舞稀はポツリと呟いた。
「確かに私みたいな一社員、が副社長の予定なんて知る必要性はなかったですね。申し訳ありませんでした」
ぺこりと頭を下げたけれど、どうして自分がこんなことで謝らなければならないのかと腹が立つ。
大体、自分が結婚しろとか突拍子もないことを言い出したんじゃないか。
婚姻届けまで突き出して、本気でサイン捺印させようとした。
挙句には毎日毎日プロポーズしに来て……いきなり姿が見えなくなったと思ったら出張って。
そんなこと前もってわかってたはずじゃないか。
だったら一言言ってくれてもよかったのに、黙って行ってしまった。
全くの無関係と言われればそれまでだけれど、まがりなりにも口説いてた女に対してそんな言い方する?
色々と考えてしまったら、沸々と怒りの感情が込み上げてきて、もうこの場にいたくないとまで思い始めてしまった。
「申し訳ありませんが、この後の業務も立て込んでおりますので、これで失礼いたします。今後一切副社長とは関わり合わないようにいたしますので、もうわざわざ来ていただかなくて結構です」
一気に捲し立てて依舞稀は席を立ち、扉に向かって歩き出した。
「待て待て待て!」
遥翔は慌てて依舞稀の背中を追うと、出て行かれるギリギリのところで腕を捕まえた。
「いたっ」
「ごめんっ」
遥翔はもう、副社長としての威厳も、イケメンのプライドも、全てをかなぐり捨てていた。

