契約結婚！一発逆転マニュアル♡

八神が遥翔の元へ身辺調査票を持って副社長室に現れたのは、土曜日の夕方17時を回ったころだった。

ダークブラウンを基調とした広い副社長室は、アンティーク家具で揃えられていて、かなりシックで洒落ている。

大きな背もたれに背を預け長い足を組み、黙って書類に目を通していた。

八神も遥翔の背もたれの後ろに立ち、一緒に書類を確認する。

「……なるほど。そういうことか」

遥翔はバサッと机に書類の束を放り投げると、ゆっくりと立ち上がり腰に手を当てて暫くの間、何かを考えていた。

やがてニヤリと口角を上げもう一度椅子に座る。

「八神」

「はい」

「この女、ここに連れてこい」

「……今すぐご希望ですか？」

「ああ。今すぐだ」

うやむやになんて絶対にしてやらない。

これは俺にとって大きなチャンスなんだ。

遥翔は強い視線を八神に向け、書類に記載されている女を絶対に連れてこいと威嚇している。

「かしこまりました。すぐお連れします」

遥翔に一礼すると、八神は副社長室を出て行った。

この報告書は神からのお告げなのかもしれない。

この機会を逃す手はないぞ、と。

そんなことは遥翔が一番わかっている。

あの女はこの場にどんな顔をして現れるのだろう。

想像するだけでも面白いではないか。

静まり返った室内で、遥翔はその扉が開くのをじっと待った。