契約結婚！一発逆転マニュアル♡

こういう目をする遥翔は、面倒なことを頼んでくるはずだ。

八神の直感が瞬時に働いた。

「さっきの女、どうも気になる」

なぜこんなに気にしてしまうのか。

なにがどう結びつくのかは、遥翔自身もわからない。

けれど何故だか先ほどのホステスの態度と、何よりも強い瞳が強烈に遥翔の何かを刺激したことだけは確かだ。

そんな遥翔の胸の内など知る由もない八神は、やれやれと溜め息をつく。

「副社長のタイプとは違うようですが？」

遥翔の好む女性はいつも、スタイルのいい派手目の美人ばかりだ。

なかなか女性に対して本気になれない遥翔にとって、選別条件は美人かそうでないかしかないように思う。

確かにさっきのホステスも、かなりの美人でスタイルもよくグラマラスではあった。

しかしそれは化粧でそう見せているだけで、実際のところはどちらかといえば可愛らしい顔をしているように見受けられた。

遥翔の基準とは若干異なるのではないだろうか。

そこまでの気を利かせて言ったのだけれど、遥翔は二度ほど咳込んだ。

「そういうことを言ってるんじゃないだろっ」

拳で口元を隠し慌てて振り向いた遥翔の表情は、まるで少年のようだった。

何とも可愛らしい仕草をするのだろうか。

こんなことは未だかつてなかったというのに。

クスリと笑ってしまった八神を遥翔はじろりと睨みつけるが、気心知れた関係である遥翔と八神の間では委縮する事もない。

「失礼しました」

八神は笑みを隠すことなく、まるで宥めるかのように口だけで謝罪した。