契約結婚！一発逆転マニュアル♡

仕事も副業も上手くいっているかに思えたけれど、やはりどんな形であってもダブルワークは負担が大きい。

プライベートも犠牲にして働くのは、恐ろしいほどに精神をすり減らす。

ましてや副業を絶対に人に漏らすわけにはいかない依舞稀には、自分の苦労を愚痴る相手すらいないのだ。

こんな生活が一年も経てば、もう全てを投げ出したくなってしまっても当然だと考えるようになってしまった。

両親の人脈は、自分のものではない。

医者でない依舞稀を必要とする人間などいない。

その現実を受け入れてしまったら、自分の価値が何なのかも疑問に思えてきてしまう。

そんな感情を持ちながらも、なんとかギリギリの笑顔を張り付けて生活していた。

そんな時、大きな事件ともいえる出会いが待っていた。

依舞稀はホテルの仕事を終え、いつものようにクラブに出勤していた。

「イブ、今日はペース早いんじゃないの？」

同じホステス仲間が心配して声を掛けてくれる。

「明日は休みだから平気。少しでも高いボトル入れてもらわなきゃ」

「イブの顧客はみんな高いの落としてくよね～」

「当然でしょ？そういうふうに誘導してるんだから」

そうでもしなければ、この生活から抜け出すことなんてできないんだから。

ここに来る男性は皆、女にお金を落とすために来ている。

そう思わなければ、依舞稀に長いことこの仕事を続けるのは不可能だった。