契約結婚!一発逆転マニュアル♡

それからの依舞稀の生活は一変した。

相続放棄をしてしまえば、全ての財産の引継ぎを放棄できるわけだが、依舞稀はどうしても自宅だけは手放したくなかった。

自分と両親の思い出の詰まった家を、こんなに簡単に手放してしまうことはできない。

急にいなくなってしまった二人が大切にしていた家を処分するには、あまりにも時間がなく心の整理が出来なさ過ぎた。

結果として、一度自宅は競売に掛けられたが、先買権を行使し自宅を購入することで手放さずにすんだのだ。

しかしこのことで、依舞稀の負債額は2千300万となってしまったのだ。

この負債金額をどうやって返していくのか。

必至に考えてみた結果出た答えは……。

「いらっしゃいませ~。ご指名ありがとうございます。イブで~す」

酒とたばこのにおいが漂う薄暗く、それでも煌びやかな店内。

薄いピンクのオーガンジードレスに身を包んだ依舞稀は、上手い作り笑いを浮かべてボックス席にやってきた。

依舞稀は一般的にクラブといわれるところで、ホステスとして働くことを決めた。

安易だとは思うが、自分が女である以上、それが一番手っ取り早いやり方だと判断したのだ。

幸いなことに容姿とスタイルに恵まれている依舞稀だ。

おまけに今まで取った資格も役立って、人を不快にさせずに上手くあしらう術や、包み込むように客の話を聞く術がピカイチときている。

そんな依舞稀に指名がないはずもなく、二カ月目の給料は30万ほどになった。