ある日の早朝。
遥翔のスマホの着信音で目が覚めた。
隣で眠る依舞稀にそっと毛布を掛けてやると、まるで安心したかのようにもぞもぞと埋もれた。
遥翔はスマホの着信をバイブに切り替えると、依舞稀を起こさないようにそっとベッドを出た。
寝室を出てリビングのソファーに座ると、遥翔はスマホの通話ボタンをスライドさせる。
「こんな時間になんだよ。まだ起きるには早すぎる時間なんだけど?」
なかなか切れなかった電話の相手は、久し振りに声を聞く遥翔の母親の美穂子であった。
只今の時刻、午前5時20分。
通常であればまだ夢の中の時間である。
『ごめんなさいね。詳しい時差がわからなくて』
ごめんと言いながらも悪びれた様子もなく、電話口の美穂子は陽気に笑った。
「特に気にもしてなかったけど、今どこにいるんだよ?」
最初の予定では3ヵ月程度の視察旅行だったはずだ。
それがどうだろう。
もう9カ月も経ってしまっているではないか。
『心配してくれてるの?』
「当たり前だろ?」
『その割には一度も連絡くれなかったじゃない』
「そうだっけ?」
9カ月も音信不通であった両親の心配を全くしていない息子というのも薄情な話ではあるが。
しかし視察が終わった後に暫く旅行することにしたということは八神の報告で聞いてはいた。
現役の社長でいた頃の誠之助は本当に多忙で、のんびり夫婦で旅行する時間など取れはしなかった。
遥翔のスマホの着信音で目が覚めた。
隣で眠る依舞稀にそっと毛布を掛けてやると、まるで安心したかのようにもぞもぞと埋もれた。
遥翔はスマホの着信をバイブに切り替えると、依舞稀を起こさないようにそっとベッドを出た。
寝室を出てリビングのソファーに座ると、遥翔はスマホの通話ボタンをスライドさせる。
「こんな時間になんだよ。まだ起きるには早すぎる時間なんだけど?」
なかなか切れなかった電話の相手は、久し振りに声を聞く遥翔の母親の美穂子であった。
只今の時刻、午前5時20分。
通常であればまだ夢の中の時間である。
『ごめんなさいね。詳しい時差がわからなくて』
ごめんと言いながらも悪びれた様子もなく、電話口の美穂子は陽気に笑った。
「特に気にもしてなかったけど、今どこにいるんだよ?」
最初の予定では3ヵ月程度の視察旅行だったはずだ。
それがどうだろう。
もう9カ月も経ってしまっているではないか。
『心配してくれてるの?』
「当たり前だろ?」
『その割には一度も連絡くれなかったじゃない』
「そうだっけ?」
9カ月も音信不通であった両親の心配を全くしていない息子というのも薄情な話ではあるが。
しかし視察が終わった後に暫く旅行することにしたということは八神の報告で聞いてはいた。
現役の社長でいた頃の誠之助は本当に多忙で、のんびり夫婦で旅行する時間など取れはしなかった。