一般家庭でごく普通に育ち、社会に出て楽しいながらも平凡に生きてきた璃世達にとって、依舞稀の過去は想像を絶するものであった。
こんな愛らしい依舞稀にこんな過去があろうとは。
「そうだったんだ……」
呟いては見たものの、花音はこの後を続けることができなかった。
「あのメールは悪意しか感じられませんでした。きっとメールを鵜吞みにする人なんていませんよ。しっかり説明と否定もされてるわけですし」
何とか笑顔を引き出そうと美玖が明るくそう言ったが、帰って来たのは依舞稀の引き攣った笑みだけだった。
自分が何か言わなくては。
璃世は頭の中で依舞稀に掛ける言葉を整理する。
同僚で同い年で一番親しくて、依舞稀のことが本当に大好きだった。
依舞稀からも同じ気持ちが帰って来ているとは自負していたけれど、仕事以外で関わり合ったことは数える程度しかない。
それもそのはずだ。
依舞稀にはそんな時間はなかったのだから。
依舞稀の事情を知れば、全ては仕方がなかったのだと思える。
けれど、もっと早くに知っていたら。
もっと依舞稀のためにできることがあったのではないだろうか。
整理するどころか、そんな考えでいっぱいになってしまった。
「私……偽善者だなぁ」
璃世は胸の痛みに耐えるように、辛い笑みを漏らした。
「璃世……?」
依舞稀は恐る恐る問いかけた。
「もっと早くに知ってれば、依舞稀を助ける事ができたかもしれないなんて。そんなことできるはずもないのにね」
知って何ができただろう。
依舞稀の抱えた借金を肩代わりすることも、自分の給料を返済に充ててやることも、一緒に副業してやることも、何一つ出来てはいないだろう。
「こんなことを言っていいのかわからないけど。依舞稀が話してくれたのがこのタイミングで良かったって思ってる」
「璃世さんっ」
冷たく突き放したように聞こえたのだろう。
美玖は攻めるように璃世の言葉を止めた。
こんな愛らしい依舞稀にこんな過去があろうとは。
「そうだったんだ……」
呟いては見たものの、花音はこの後を続けることができなかった。
「あのメールは悪意しか感じられませんでした。きっとメールを鵜吞みにする人なんていませんよ。しっかり説明と否定もされてるわけですし」
何とか笑顔を引き出そうと美玖が明るくそう言ったが、帰って来たのは依舞稀の引き攣った笑みだけだった。
自分が何か言わなくては。
璃世は頭の中で依舞稀に掛ける言葉を整理する。
同僚で同い年で一番親しくて、依舞稀のことが本当に大好きだった。
依舞稀からも同じ気持ちが帰って来ているとは自負していたけれど、仕事以外で関わり合ったことは数える程度しかない。
それもそのはずだ。
依舞稀にはそんな時間はなかったのだから。
依舞稀の事情を知れば、全ては仕方がなかったのだと思える。
けれど、もっと早くに知っていたら。
もっと依舞稀のためにできることがあったのではないだろうか。
整理するどころか、そんな考えでいっぱいになってしまった。
「私……偽善者だなぁ」
璃世は胸の痛みに耐えるように、辛い笑みを漏らした。
「璃世……?」
依舞稀は恐る恐る問いかけた。
「もっと早くに知ってれば、依舞稀を助ける事ができたかもしれないなんて。そんなことできるはずもないのにね」
知って何ができただろう。
依舞稀の抱えた借金を肩代わりすることも、自分の給料を返済に充ててやることも、一緒に副業してやることも、何一つ出来てはいないだろう。
「こんなことを言っていいのかわからないけど。依舞稀が話してくれたのがこのタイミングで良かったって思ってる」
「璃世さんっ」
冷たく突き放したように聞こえたのだろう。
美玖は攻めるように璃世の言葉を止めた。

