契約結婚!一発逆転マニュアル♡

依舞稀が職場に復帰したのはそれから一週間後のことだった。

上司にはもう少し休んでもいいと言われたのだが、これ以上職場に迷惑をかけるわけにはいかないし、自分自身も仕事で後れを取るのが嫌だった。

これから誰を頼ることなく、一人で生きていかねばならない。

それを考えると、少しでも仕事を覚え、極める必要があるからだ。

それに依舞稀の心の中には、あの日の遥翔の言葉が繰り返し思い出されていた。

周りの人たちは腫物に触るかのように依舞稀を扱う。

光星も、それはそれは鬱陶しくなるほどに依舞稀に構った。

「依舞稀は俺が守るからね」

「俺が側にいるから」

「なにも心配しないで俺の側にいればいいから」

「俺に全て任せてればいいんだからね」

愛する男性からの言葉であれば、どれだけ心強く嬉しいだろう。

光星の言葉は依舞稀の心を揺さぶれるものではなかった。

副社長の言った意味が痛いほどわかるわ。

どんな言葉を掛けてもらっても、実際に心を奮い立たせるのは自分次第なんだ。

悲しむ時間は終わり。

しっかりと自分の足で立たなくちゃ。

そう言い聞かせ、依舞稀は笑顔でホテルのフロントに立った。

皆、依舞稀を気遣いながらも、その気丈さに胸を打たれていた。

一か月以上経ち、依舞稀の日常の全てに平穏が訪れたと安堵していた。

しかし両親の四十九日法要の日。

依舞稀はさらに雷に打たれたかのような衝撃を受けることになる。