契約結婚！一発逆転マニュアル♡

「おはようございますっ」

勢いよく上擦ってしまった依舞稀の声がフロアに響く。

その声に反撃するかのように、「なにがおはようだ！」と部長の太く大きな声が返ってきた。

明らかに依舞稀に対して投げかけられた怒鳴り声だ。

ああ……。

やはりここでやっていくということは無理なのだろうか。

鼻の奥がツンとして、涙が溢れそうになったとき。

「一時間も遅刻じゃないかっ。まずは『遅れてすみません』だろっ」

依舞稀の予想とは違った言葉が飛んできた。

「いくら副社長を連れて来たって、遅刻は遅刻だからな」

「すみません……」

「イベント会議まであと10分しかないんだぞ。みんな会議室に集合してる。お前の企画だろうが。さっさと準備しろっ」

pcを抱えながら、部長は依舞稀を指さして勢いよく急かす。

ポカンと目を丸くしている依舞稀と遥翔の横を急いで通り過ぎようとした部長が、ピタリと足を止め遥翔と視線を合わせた。

「副社長にこんなこと言うのはどうかと思いますけど、ハッキリさせておかなければならないことなので、無礼を承知で言わせていただきます」

一部長から威圧されることなど今までなかった。

困惑した遥翔は、どう対応したらいいかもわからない。

とりあえず依舞稀のことを責められても困ると思い、「……ああ」と返答するしかなかった。