依舞稀は遥翔を促すと、ゆっくりとその場を離れた。
庇いたかったわけではなかったが、遥翔はいつまでも睨みつけていそうだったし、二人も毒蛇に締め上げられたカエルのようで、そのうち恐怖から失神してしまいそうだったからだ。
そうなったらなったで構わないけれど、今上がったこのモチベーションのまま、自分の部署に向かいたいという気持ちもあった。
遥翔はかなり不完全燃焼であったようだが、辰巳専務に対しても彩葉に対しても、十分すぎるほどの釘を刺せたはずである。
もう二度と今回のような事は起こらないであろうと確信できただけ、よしとしようではないか。
そう思うことにして、依舞稀と遥翔は営業企画のあるフロアへと向かった。
エレベーターを降り、いざ部署の入り口に立つと、さすがの依舞稀も足が竦んでしまう。
今回の件を掘り下げられ、疎まれ、疎外されてしまったら。
関わっているプロジェクトも、進行中の企画だってある。
それを全て手放すようなことになってしまったら。
この部署に自分が存在する意味がなくなってしまう。
それが一番怖いのだ。
きゅっと唇を噛み締めて俯いてしまった依舞稀の手を、遥翔はそっと握った。
「八神から、ここの奴らは依舞稀をちゃんと評価していると聞いてるぞ。何のために俺がついてきたと思ってるんだ。不安がることはない」
「……頼りにしてます」
完全に不安が消えたわけではないが、遥翔の存在は依舞稀に一歩を踏み出す力をくれた。
庇いたかったわけではなかったが、遥翔はいつまでも睨みつけていそうだったし、二人も毒蛇に締め上げられたカエルのようで、そのうち恐怖から失神してしまいそうだったからだ。
そうなったらなったで構わないけれど、今上がったこのモチベーションのまま、自分の部署に向かいたいという気持ちもあった。
遥翔はかなり不完全燃焼であったようだが、辰巳専務に対しても彩葉に対しても、十分すぎるほどの釘を刺せたはずである。
もう二度と今回のような事は起こらないであろうと確信できただけ、よしとしようではないか。
そう思うことにして、依舞稀と遥翔は営業企画のあるフロアへと向かった。
エレベーターを降り、いざ部署の入り口に立つと、さすがの依舞稀も足が竦んでしまう。
今回の件を掘り下げられ、疎まれ、疎外されてしまったら。
関わっているプロジェクトも、進行中の企画だってある。
それを全て手放すようなことになってしまったら。
この部署に自分が存在する意味がなくなってしまう。
それが一番怖いのだ。
きゅっと唇を噛み締めて俯いてしまった依舞稀の手を、遥翔はそっと握った。
「八神から、ここの奴らは依舞稀をちゃんと評価していると聞いてるぞ。何のために俺がついてきたと思ってるんだ。不安がることはない」
「……頼りにしてます」
完全に不安が消えたわけではないが、遥翔の存在は依舞稀に一歩を踏み出す力をくれた。

