歩みが進むにつれて、依舞稀の足は鉛が纏わりついたかのように重くなっていく。
堂々としていろと遥翔は言ったが、規律を犯してしまった以上胸を張れないということを、自分が一番よくわかっている。
次第に遅れ始めた依舞稀の肩を、遥翔は力強く抱いた。
「ご両親のことは残念だが、俺は依舞稀がダブルワークしてくれててよかったと思うよ」
「え?」
唐突にそんなことを言うものだから、依舞稀の声が裏返ってしまった。
場所も場所で、もうすぐ一番通りたくないフロントに差し掛かってしまう。
「依舞稀は全てのことを真摯に受け止めてくれる。自分の置かれた状況化の中で、何が一番大切で何を一番求められているかを感じ取ってくれる。人の心に寄り添って支えてくれる強さも持っている」
「急にどうしたんですか。その話はまた今度……」
「善悪の判断も羞恥心も、思いやることも寄り添うことも。何も持っていない人間が人を陥れることなんてできる筈がないじゃないか。実際に足元掬われて自分の立場さえ危なくなってるわけだしな」
いつの間にかフロントまで数メートル。
遥翔のこの言葉は確実に辰巳彩葉に聞こえてしまっていることだろう。
「そんな低能な人間は、俺にもホテルにも必要ない」
大きな声でハッキリと、皆の耳に入るようにそう言った。
そしてさらに……。
「な、そう思わないか?」
遥翔は微笑のまま冷めた視線で彩葉を捉え、あろうことかそう問いかけたのだ。
堂々としていろと遥翔は言ったが、規律を犯してしまった以上胸を張れないということを、自分が一番よくわかっている。
次第に遅れ始めた依舞稀の肩を、遥翔は力強く抱いた。
「ご両親のことは残念だが、俺は依舞稀がダブルワークしてくれててよかったと思うよ」
「え?」
唐突にそんなことを言うものだから、依舞稀の声が裏返ってしまった。
場所も場所で、もうすぐ一番通りたくないフロントに差し掛かってしまう。
「依舞稀は全てのことを真摯に受け止めてくれる。自分の置かれた状況化の中で、何が一番大切で何を一番求められているかを感じ取ってくれる。人の心に寄り添って支えてくれる強さも持っている」
「急にどうしたんですか。その話はまた今度……」
「善悪の判断も羞恥心も、思いやることも寄り添うことも。何も持っていない人間が人を陥れることなんてできる筈がないじゃないか。実際に足元掬われて自分の立場さえ危なくなってるわけだしな」
いつの間にかフロントまで数メートル。
遥翔のこの言葉は確実に辰巳彩葉に聞こえてしまっていることだろう。
「そんな低能な人間は、俺にもホテルにも必要ない」
大きな声でハッキリと、皆の耳に入るようにそう言った。
そしてさらに……。
「な、そう思わないか?」
遥翔は微笑のまま冷めた視線で彩葉を捉え、あろうことかそう問いかけたのだ。

