契約結婚!一発逆転マニュアル♡

それならばいっそのこと、畳み掛けてしまった方がいいだろう。

小出しにしていくのにも飽きてきた。

「この件に関して専務にできることは何もありません。既に解決済みです。蒸し返しても専務には決定権など与えられてはいないでしょう?」

馬鹿にされたらバカにし返す。

それくらい図太くなければ一人で生き抜くことなんてできなかった。

どうやらそれがここで活かされそうだ。

「緒方……」

決定権を持たないという自分の立場の弱さに触れられたことが、よほど頭に来たのだろう。

辰巳は顔を真っ赤にしながら依舞稀を思い切り睨みつけた。

依舞稀はその表情を鼻で笑うことで辰巳の感情を逆撫でた。

「こちらからも辰巳専務にご報告したいことがあったんです」

ニッコリと微笑んだ依舞稀は、彩葉の行動の全てを事細かに辰巳に話して聞かせた。

「故意の業務妨害、特定の人間に対する執拗な詮索や、勝手に他人に情報を漏らしたことに対するプライバシー侵害、相手はストーカー行為をする恐れがある人物だと認識した上での情報提供は、ストーカー規制法違反になります」

光星は、骨は折れたが話せばわかる人間だったが、この際ストーカー予備軍という設定にさせていただこう。

「刑事事件としては取り扱ってくれない案件でしょうが、民事になれば話は別ですよ?」

もちろんすべて解決済のことなので、今さら彩葉を訴えるつもりなど毛頭ない。

しかし辰巳が遥翔の失脚を目論む以上、こちらもその気があることを知らしめておく必要があった。