契約結婚！一発逆転マニュアル♡

千里の顔色はどんどん悪くなり、一切依舞稀と視線を合わせない。

この女には分かっているのだ。

自分のしたこと、彩葉の立場と依舞稀の立場の違い。

この三人の中で誰が一番立場が強いのか。

しかし自分の立場を考えると、部署の違う依舞稀よりも同じフロントである彩葉の言葉の方が優先される。

だからこそこんなに脅えているのだろう。

「いままで散々可愛がっていただいたみたいですね。結婚してからこっち、たくさんのトラブルに見舞われて大変だったんですよ」

「そう、それはお疲れ様」

「あなた達二人と迫田さんがしてきたこと、全て把握してます」

「何の事かしら？」

彩葉は意地でも今までの出来事を認めはしないだろう。

「とぼけるならそれでもいいですけど。このことは八神さんが裏で調査してくれてます。まさか八神さんが裏も何も取れないほど自分が優れてるなんて、思ってるわけじゃないでしょう？」

「なっ……」

八神の名前を出した途端に、ようやく彩葉の余裕の表情が崩れた。

「何ですって……？」

本当は八神にも遥翔にも何一つ話してはいないのだが、やはり八神の名前は効果覿面であった。

かなりのやり手で、幹部の操縦から部下の管理まで、全てのことを厳しく管理できるのは八神くらいなものだ。

その八神が調査して、取れない裏などないと思わせるための作戦は大成功のようだった。