契約結婚!一発逆転マニュアル♡

ロッカールームの扉をノックするが、中からの返答は何もない。

そっと扉を開き中を確認したが、誰も居ないようだった。

「くっそ」

もう出てしまったかもしれない。

依舞稀は慌てて従業員専用の通用口に向かって走り出した。

一階まで下りてきて、もうすぐ出口になるというところで、やっと二人の背中を捕まえた。

「待ってくださいっ!」

依舞稀は大きな声を上げて、二人の進行を妨げた。

ピタリと歩みを止めて振り返ったのは、眼光の鋭い彩葉と、顔色が悪くビクついている千里だった。

彩葉の視線には一瞬だけ怯んだけれど、ここで負けては今後もマウントを取られたままになるだろう。

弱さを見せてはだめだ。

ここで一人で立ち向かい、一人で解決できれば格好いいのだが、依舞稀の中で何かあれば遥翔がついている、という安心感が気を大きく持たせているのかもしれない。

「このまま帰られては困ります。大事なお話させてください」

彩葉の威圧的な視線に圧されないよう、依舞稀はしっかりと視線を合わせて二人に近づいた。

「私達、勤務時間を終えて帰るところなの。またにしてくれない?」

よくもまあ、そんなことを言えたものだ。

「安心してください。時間は取らせませんよ。私が一方的にお話しするだけです。お二人はそれを理解してくださればいいです。反論なんてできないでしょうから」

怒りと緊張がある一定のラインを超えると、どうやら依舞稀は不敵な笑みを浮かべるらしい。