「え…えっと,桜ちゃん?」

名前で呼んでいいなんて言ってないのに…

黒々とした感情が風船みたいに広がっていくのがわかった。

私,傷ついてる…

そのことがいつもはほんの少しだけ嬉しいのに…今日は風船を膨らませる道具にしかならなかった。

「いません!!そんな人…」

小声だけど怒鳴ったように返事をして,刺々しい雰囲気を自分から放たれるように再現する。

早く何処か行って!

心の中でそれだけを繰り返した。