入院しているおじいさんと笑いながら手をつないでいたことにはちょっと嫉妬したけどね、と言い幸野さんはコーヒーを飲む。私は頰が熱くなっていくのがわかった。

知らず知らずのうちに、私のことを幸野さんは見ていたんだ。失敗したところを見られたのは恥ずかしいけど、でもなぜかそれ以上に嬉しくって……。

「でも、私はしばらく恋愛はお預けです!早く一人前の看護補助員にならないといけませんから!」

高鳴る胸を誤魔化すように、私はカフェラテに口をつける。ほろ苦いカフェラテから口を離した直後、幸野さんに両頬を包まれた。

「ゆ、幸野さん!?」

幸野さんは片方の手で私の口周りに触れる。その指についたものに、私は子どもみたいと恥ずかしくなってしまった。幸野さんは私の口周りに付いているカフェラテの泡を取ってくれているんだ。

「す、すみません……」

私が謝ると、泡を舐めて幸野さんは「顔赤くなっちゃって可愛い。意識してくれてるんだ」と意地悪そうに笑う。

そんな顔にもときめいてしまったなど、絶対に言えない。