「お茶を配るとき 他の奴と 喋ったら駄目だよ。」

自分の物にした途端 湧き上がる独占欲に 聡は戸惑う。


美咲には、全く 感じなかった思いだから。
 

「えー。おはようございますは 言わないと。」


啓子は 驚いた顔で 聡を見る。
 

「お茶は 机の上に 置くんだよ。手渡したら駄目だからね。」

少し ぶっきらぼうに 聡が言うと 啓子は クスクス笑い
 

「どうしたの 聡。もしかして ヤキモチ妬いてくれているの。」

と聡を見上げた。
 

「俺、早く みんなに 言いたいよ。ケイは 俺のものだって。」


膨れたように呟く聡を 啓子は 嬉しそうに見つめる。
 


「ありがとう。でも大丈夫だよ。誰も 私のことなんか 何とも思ってないから。」


啓子は優しい目で 聡を見て言う。


「ケイが 気付いてないだけだよ。みんな ケイのこと 良い子だって 言っているんだよ。」

聡も 今まで 気付かなかった。


啓子を意識して 初めて周りの声が 耳に入った。

職場で啓子は とても評判が良い。
 

「聡が そんなこと言うの 何か うれしい。」

啓子は 花のような笑顔で 聡を見る。