秋の終わり。

聡が 東京に 出張することを 啓子は 小耳にはさんだ。


聡は 必ず 片思いの人に会う。

この機会に 賭けるはず。


聡の思いが 啓子には 手に取るようにわかる。


聡も 啓子と同じ思いに 捉われているから。


出張までの日々 聡の笑顔が 輝いていることに 啓子は 気付いていた。


啓子は 自分の恋が 終わろうとしていることを知る。


聡の思いが 叶ったら 啓子は 完全に失恋する。


もし 聡が フラれたとしても 聡は絶対に 啓子を 求めないだろう。
 


啓子の気持ちを 聡は知っている。

今まで聡が 啓子に 心を許していたのは 聡の片思いを 啓子が 知っているから。


知っていても 啓子が離れないから。


多分 聡の 誰にも言えない思い。



それを 啓子は 聞いていたから。