あいつの悪役ヒロイン




「は?」


思わず声が出る。
ハナちゃんがびくりと肩を震わせた。


「その、あの、だって日高くんには
石川さんがいるのに

私が日高くんと遊びに行くなんて
石川さんに、悪いかなって……」



男から見たら、こんな震えた小鹿みたいな女が可愛く見えるのか。

偽善者気取りして、ずいぶん残酷なことを平然と言う女。



「なんであたしが出てくんの?

あたしが日高を好きだとでも思ってんの?」


「……違うの?」



「…あたしが日高を好きだろうが好きじゃなかろうが

あんたと日高が映画行くことに関係ないよね?」


否定は、できなかった。

でも、精一杯の悪態をついてやった。


「…ごめんなさい、わたし」

「そうやってあたしにまで気使って
いい子ぶんなくていいから」



ハナちゃんの目が じんわり充血している。


傍から見たらこんなの、
私ものすごい悪役だな。


主人公とヒロインの邪魔をするモブ女。