何時だって、拓斗は私に優しかった。
私の全部を受け止めてくれて、受け入れてくれて。
肯定してくれていた。
間違えた選択をしそうな時は、助言してくれて。
しっかり軌道修正してくれた。
そんな拓斗だったから。
例え拓斗自身が望んでいなくても、周りには拓斗を慕う人達が自然と集まるようになり、いつも沢山の取り巻きで溢れていた。
私は、人気者で男女ともにモテる拓斗の隣りに居続けることが、勝手に苦しくなって不安に思い始めて。
勝手に辛くなって、拓斗から離れたくなった。
『好きだけど、もう一緒にいたくない』なんて。
普通なら理解などしてもらえなような別れる理由を、拓斗は私を責めることもせず、黙って受け入れてくれたのだ。
そんな身勝手な私に、会いたいと思ってくれていたというの？
願掛けまでするほど？
「青葉のこと、手放すべきじゃなかった。あの時程、青葉の気持ちを尊重するべきじゃなかったって、後悔したことなかったよ」
離れたいと言った私を、どんなことをしても引き止めるべきだった、と呟いた拓斗。
私は拓斗と一緒に、同じ景色を見ていることができなかった。
進むべき道を間違えたのは、私だけ。
違う道をお互い選んだのだと思い込み、都合良く自分に言い聞かせ。
酷いことをした自分の罪を軽くしたかっただけ……。
「ごめん、自分勝手なこと言ってるよな。青葉は俺に会いたいなんて、微塵も思ってなかったよな」
そう口にした拓斗の声は、今まで聞いたことがない初めて耳にする声で。
今にも泣き出してしまいそうな位に、切なさを誘う拓斗の声が、私の心のドアを静かに開ける……。
