私を見下ろすように見つめる瞳も、スタイリッシュな着こなしも、私が好きだった拓斗のままで。
 何だか懐かしさと共に、鼻の奥がツンとする。



「ひとり? 何処かへ行く途中?」

「あ、うん。まぁ……拓斗は?」



 つい言葉を濁してしまった。
 なんとなく、拓斗の前では昔のままの私でいたいと思ってしまったから。



「買い物」

「ふぅん……」



 言葉が続かない。
 ずっと会いたいと願っていたのに。
 会えたら……。



 ふと、拓斗の指にはめられた指輪に目がとまった。

 『ペアリングなどしたくない』と、常日頃から口にしていたくせに。
 今は、自分の意志を曲げてしまえる程、ペアリングを着けたくなるような彼女がいるという、無言の証拠を突き付けられてしまうなんて。



 その人は、どんな人? 歳は? 綺麗? 可愛い? etc……



 聞きたいことが頭をよぎるくせに、何一つ聞くことができない。

 ううん、聞きたくないんだ……私。



「青葉?」



 私の視線に気づいた拓斗は、もう片方の手で指輪に触れてクルクルと回している。


 会いたかったのに、会いたくなかった。


 自分でもよく分からない変な感情が沸き立ち、モヤモヤと胸の中に広がる。



 幸せになんて、なっていてほしくなかったの。
 願わくば、私と同じ気持ちで。
 私と同じように……。



「俺さ、青葉に会いたかったんだ」

「拓斗?」

「青葉と別れたこと、ずっと後悔してた。別れてからも、青葉のことが頭から離れなかった」



 もしも、どこかで再会できた時は。
 それを私に伝えたかったのだ、と拓斗は静かに口にした。