私が拓斗と別れたのは、3年前。
 お互い、嫌いになって別れたわけじゃない。
 進むべき道が違ってしまったから。


 それなのに。
 あの日から、私は拓斗を探している。



 街中で、ふいに聞こえてくる拓斗に似た声に。
 拓斗に似た背格好に、顔つきに。
 過敏に反応したりして。


 もう、頭の片隅からも消えかけているはずの、拓斗の香りにさえ。
すれ違いざまに鼻をかすめれば、否応なしに振り返ってしまうなんて……。



「青葉?」

「……拓斗……」



 嘘みたいな再会は突然やってきて、私は真っ先に後悔したのだ。
 こんな日に限って、洗いざらしのシャツにGパン、適当に結んだ髪の私。



 最悪。
 神様は、なんて意地悪なんだろう。



 そんな私の姿をマジマジと見つめた拓斗は、何を思っただろう。
どう感じただろうか。なんて、脳裏にはそんな言葉ばかりが浮かぶ。



「青葉、久しぶり。元気だった?」



 戸惑っている私に向けられた拓斗の声は、本当に懐かしんでいるようで。
あの頃と変わらない、穏やかで優しい声。



「うん。拓斗も」



 胸の奥が、じんわりと温かくなるのと同時に、複雑な気持ちが生まれた。