私の作った食事を 美味しそうに食べて。

後片付けをする 私のそばで

純也が コーヒーを淹れて。


「ねぇ まりえ。上高地って知ってる?」

「うん。私 長野の出身だよ?」

「行ったことある?」

「子供の頃に 一度 行ったよ。」

「旅行 上高地は どうかなって思ったけど。実家 近くてイヤ?」

「ううん。イヤじゃない。上高地がいい。」

「じゃ ホテル 予約しちゃうね。」


ソファに 並んで座って。

タブレットを操作する 純也の手元を覗いて。


「松本に アンティーク家具のショップがあるから。帰りに 見てこようね。」


私が 本当は 家具のコーディネーターになりたかったと

前に言ったことを 純也は 覚えていてくれた。


「わぁ。楽しみ。欲しくなっちゃうかも。」

「新居用に 予約しちゃう?」


純也の言葉に 私は ハッとして 顔を上げる。

逆に 純也は タブレットに 目を落とす。


もしかして 照れている?

私は 純也の首を抱いて 頬にキスをした。