モデルルームに移動して サンプルの準備を始めると

「あっ。麻里絵ちゃん。ちょっといい?」

純也が 私の後を 付いてくる。

「はい。どうしました?」


「コラッ。意地悪したら お仕置きだよ?」

見つめ合う瞳は 2人とも 甘くて。

純也こそ。こんなことじゃ バレちゃうよ。


「夕食 作っておくから。帰りに 寄ってね。」

私を手伝って 部材を運んでくれる純也に

私は そっと小声で言う。


「助かります。よろしくね。」

普通の声で 答える純也は

優しい目で 私に 頷く。


一つずつ 小さな信用を 積み重ねて。

私の心を 掴んだ 純也。

やっぱり 優秀な 営業マンだね。


私は 過去が 辛くないだけじゃなく

純也を失うことも 怖くない。


純也は 大きな愛で 私を 包んでくれるから。


愛されていることを 信じられるから。


もし いつか 純也と離れることになっても

私は 純也と過ごした時間に 感謝できる。


そのくらい 私は 純也に 愛されていた。