純也の肩に寄りかかり 並んで座ったソファ。

「まりえ。お盆休みは 実家に帰るの?」

私の髪を 甘く弄りながら 純也は聞く。

「うーん。まだ決めてない。」


「もし 帰らなくてもいいなら 旅行しない?」

「ホント?うん。行きたい。」

夏の帰省は 私の 最大のトラウマ。

特に 恋人ができた今は 恐怖に近いくらい。


「まりえ。行きたい所 ある?」

「えー。急に言われても… 今からで 予約取れる?」

「そうだなぁ。飛行機とかは 多分無理だから。ドライブで行ける所ね。」

「うん。うん。私 箱根でいいよ?」

棚に飾ってある ポストカードを 私は見る。


あの時 私を感動させた 青い絵。

純也が 帰りに グッズショップで 買ってくれた。


「またピカソ?それもいいけど。そろそろ 最後の武器で まりえの壁 崩したいからなぁ。」

「何それー。私 もう 壁ないよ?」

私は クスッと笑う。


「まあね。だからさ 今度は 武器を使って まりえを 俺に夢中にするの。」

「武器 使わなくても もう…」

私は ちょっと恥ずかしくなって 最後まで言えない。


「マジで可愛いな。俺の方が よっぽど…」

純也も 最後まで言わずに。

「そろそろ 寝ようか?明日は 湯沢さんの打合せだよ。」

「うん。ベッド狭いけど。いいの?」

「いいよ。ピッタリくっ付いて寝るから。大丈夫。」