花火大会の日は どうせ仕事にならないと

純也は 早めに 仕事を終えて

私を 迎えに来てくれることになった。


せっかくだから 私は 浴衣を着て 純也を待つ。

初めて着る 浴衣。髪も アップにして。


仕度をしていると 気分が 上がってくる。

私を見て 驚く 純也が楽しみで。


誰かを 喜ばせたいとか。

誰かのために 何かをしたいとか。

私は もう 変わり始めていた。


迎えに来た純也は 私を見て 嬉しそうに 微笑む。

「まりえ。危険だな。俺を 挑発すると どうなるか 知ってる?」

純也の笑顔や 弾んだ声が 嬉しくて。


少し照れた笑顔を 向ける私に

純也は そっとキスをして 車を発進させた。


シャイで 慎重な純也の

思いがけない行動が 嬉しくて。


私が クスッと笑うと 純也は

「その浴衣 いいよ。まりえに似合ってる。」

前を向いたまま もう一度 私を褒めた。


純也は きっと 気付いている。

過去を 克服しようとする私に。


それが 純也のためだということに。