その日のお客さんは 関根さん一家。

二世帯住宅の 大きな家。


打ち合わせの 主導権は 若奥様。

30代半ばで キツそうな性格。


ご主人も ご両親も 気を使っていて。

物静かな ご両親は あまり希望も言えず。

私にとって 楽しい打ち合わせではない。


自分の希望を 押し通す 若奥様。

私は さり気なく お母様の表情を見て。

若奥様の気分を 損ねないように

慎重に 言葉を選んで 誘導してみる。


「こちらの外壁は モダンなんですけど。欠点は 汚れが目立つことなんです。例えば これなんか いかがでしょう。仕上がりは 似た雰囲気になりますし。凹凸が多いから 汚れも あまり目立たないので。」


さっきから お母様の目線が ずっと向いていたから。

「そうか。長く使うから。汚れっぽいのは イヤよね。どうせ誰も 外壁掃除なんて しないものね。じゃ こっちにしようか?」


若奥様の決定に お母様は 笑顔で頷く。


こんな風に 打ち合わせを 進められるようになったのは 純也と 付き合ってから。


永く住む家だから みんなに 満足してほしい。


仕事だから 早く決めることも 大切だけど。

家族みんなに 満足してほしい。


家は 家族が住んでこそ 完成するものたから。


自分に 大切な人ができて。

大切な人と 生きていく時間を 意識して。

初めて 家の 大切な意味に 気付いた。


今までのお客さんに 少し 申し訳なく思いながら。