私は目を覚ますと、バスの中にいた。 

ズキズキする頭の痛さで何とか体を起こした。

辺りを見回すと喋り声とかは無かったから、私が1番早く起きたみたいだった。

隣では高野君が寝ていた。

だから、体を揺さぶって起こそうとしたけど、起きなかった。

多分、まだガスが。。

そして、窓には鋼鉄。

流石に怪しいと思ったから、私はシートベルトを外して運転席へ向かった。

だけど。

『あっ、、』

運転席を見た瞬間私は冷や汗が止まらなかった。

「運転席には誰もいなかった。」

そう。

誰もいなかった。

ハンドルだけが。動いていた。

運転席の目の前の窓も全て鋼鉄で塞がれていて、ただ、ハンドルが無意識に動いていた。

「え、運転手がいないってこと?」

私の発言に戸惑う寧々ちゃん。

「そう。ハンドルが無意識に動いていただけだったの」

流石にこれは、人間のできることではない。

「うそ、、、!」

寧々ちゃんも恐怖を覚えるような震える声だった。

確かに、いまの技術で出来るのかもしれないが、違う。

私が言いたいのは。。

「それで、扉が開かないか調べてみたの」

バスの扉、そこだけは鋼鉄では塞がれていなかった。

出入りするからだと思う。

でも。

「何をやっても、バスの扉は開かなかった。」

バスの扉は開かなかった。

「蹴ってみても、ボタンを色々探っても、ブレーキを押してみても、バスは止まろうもしないし、扉も開こうともしなかったの。窓の鋼鉄も壊そうとしたけど、無理だった。」

全て出来そうなことは試したが、全て無理だった。

「まさに、無人バスですね。」

「そうなの。」

森永君。

森永君が言うように、このバスは無人バス。

このバスに乗っているのは私と寧々ちゃんと森永君と高野君と嬢薙さんと北山君、そして。。

「X。」

隣から高野君の声が聞こえた。

「た、高野君。起きたんですね」

寧々ちゃんが安心した声で言う。