「ちょっ!ちょっと……離して!」
 「危ないから暴れるな」
 「だって、千絃が……」
 「そんなに嫌か?俺と寝るの……何もしないって言ってるのに」


 そう言うと、寝室にある大きめなベットに響をゆっくりと下ろした。
 その声はとても残念そうであり、響を見る目もどことなく寂しそうであり、響は思わず躊躇ってしまう。


 「そういうわけじゃ………」
 「じゃあ、理由は?」
 「………だって、恥ずかしいじゃない。初めて、千絃と一緒に眠るのに、綺麗じゃないなんて嬉しくない」
 「…………なるほど。じゃあ、こうしよう」
 「え?」
 「響を貰うときに俺が綺麗に洗ってやる」
 「………………え…………」
 「よし。じゃあ、寝るぞ」


 そう言って響の体を優しく倒し、千絃もそのまま隣に横になってしまう。
 リモコンで電気を消し、間接照明だけになると千絃は響を抱き寄せ始めた。



 「何で勝手に決めるの!?一緒にお風呂なんて無理……」
 「その話しはまた今度な。もう寝るぞ」
 「だから、今日は嫌なのに……」
 「………おまえの匂い、懐かしい。やっぱり、安心するな」


 千絃は目を瞑りながら、響を抱きしめてそう言った。その表情はとても穏やかだった。

 そんな事を言われてしまっては、もう彼から逃げ出す事は出来なかった。

 響も千絃と同じように、昔の懐かしさと心地良い安心感を感じてしまったのだから。