「私、自分の事しか考えてなかった。自分が目が見えなくなるのが辛いって事ばかりで、千絃の変化に気がつけなかった。甘えてばかりだった。………それなのに、私は酷い事を言ったよね。今も昔も………千絃は私のために頑張ってくれてたのに……痛いのも辛いのも我慢してたのに。ごめんなさい。………本当にごめん」
 「……響は気にしなくいいんだ。俺は、そんな事全く思ってなかった」
 「でもっ!」
 「響は俺だけに甘えてくれた。それが嬉しかったんだ。頼ってくれて、弱いところを見せてくれた。惚れてる相手がそんな風に自分を認めて信頼してくれてるんだから、嬉しかったんだ」


 千絃は少し恥ずかしそうにしながらも、そう言い切り、響の顔を覗き込みながら近づける。
そして、尚もながれる涙をペロリと舐めた。


 「っっ!千絃っ!」


 驚いて思わず顔に手を当てる。そんな様子を見て、千絃はとても楽しそうに笑っている。昔の辛い話をしていたとは思えないほどの笑顔だった。
 千絃の行動とその笑顔に、響に言葉を失ってしまう。

 そんな響を見つめながらな、千絃はまた話を続けた。まだ不安な気持ちを隠せない響の手を握りしめ、安心出来るようにしながら。



 「それに、俺は強くなるだけがおまえを守る手段じゃないって思ったんだ。……響はいつかは剣道が出来なくなる。それならば、その時の居場所が必要だと思ったんだ。そして、おまえの剣の美しさをいかせる場所が他にもあるんじゃないかって」
 「………居場所……」