「………また、泣いた?」
 「え……」
 「それか、悩んでるとか?どよーん、としてるから」
 「………どうして、和歌さんにはバレちゃうんですかね」
 「漣さんとは長いからね。中庭のお友だちだなら」


 彼の言葉は、スーッと体に染み込んでくるようにホッとする。和歌に相談してもいいだろうか?と悩んでいると、彼は続けて言葉を掛けてくれる。


 「漣さんが悩んでいるのは、あの時の彼かな?車で迎えに来た」
 「そうです。幼馴染みで、仕事に誘ってくれて……でも、彼の考えている事がよくわからなくて」
 「そう………。でも、わかる事もあるだろう?」
 「わかる事、ですか?」


 ゆったりとした和歌の声。
 そして、低音がとても心地いい。


 「自分の事はわかるだろう。泣いたという事は悲しかった、辛かったんだと思う。けど、それはよく考えてみれば、泣くほどに大切な人。そうは思わないかな?」