響は先ほどの映像を頭の中に浮かべ、あのキャラクターが自分の舞を踊っているところを想像する。きっと似合う。あの風景で伸び伸びと舞う姿を見たいと思ってしまった。
 そんな事を考えていると、笑みが漏れていたのか、千絃はニヤリと笑った。そして、近くにあった機会を操作しはじめる。


 「音楽流すぞ。あと、あの中央の×マークのところに立って」
 「………もう!やればいいんでしょ?!」


 強引なのは昔からだ。こうなっては逃げることが出来ないと響はわかっていた。
 響は刀を持って、半分やけくそで中央に立つ。そんな響を満足そう見ている千絃を目にすると少し悔しくなる。けれど、自分がやると言った以上はやるしかない。それに、あの動画の女の子が舞ってくれるのは楽しみでもあった。


 集中するために、しっかりと目を閉じる。
 覚えているのか心配になったものの、和風調の音楽が聞こえてくると、あの頃の記憶が甦ってきた。大丈夫、踊れる。体が覚えているのだから、感覚に任せよう。そう思い、響は舞った。

 剣をかかげ、体を回しながら抜刀し、風を切っていく。あの頃よりも動きがしなやかなような気がするのは、自分が日々鍛えていたからだろうか。
 音楽に合わせてゆったりと踊ると、「私もこの舞が好きだったな」と思う。始めはイヤイヤだったかもしれないが、剣道とは違う洗練された動き、女らしさを感じられ気持ちよかった。
 フッと目を開けると、千絃はとても優しく笑みを浮かべ、こちらを見ていた。
 その微笑みに胸が高なり顔が赤くなっていくのがわかった。
 体を動かしているから暑くなったのだ。そう、言い聞かせて響は彼とこれ以上視線を合わせないようにしながら、懐かしい音楽に体を合わせ、剣と共に舞続けたのだった。