「こ、これ………刀っ!?」
 「模擬刀だから安心しろ。まぁ、抜刀は出来るなら本物みたいだけどな」
 「………やらないわよ」
 「仕事やる、やらないはまずいい。久しぶりに舞ってくれないか。俺は好きだったよ。おまえの剣舞」


 剣舞。
 剣を持ち神様に躍りを奉納するというもの。
 本来はその目的だったけれど、1度高校の時にダンス部の顧問から「文化祭剣舞をやってみないか」と誘われたのだ。ダンス部は人数も少なく、毎年盛り上がりにかけてしまうため、顧問がその年こそは盛り上げようとしたのだ。ただ未経験の下級生しかいなかったため、響に剣舞を踊ってもらい、バックダンサーとして踊るというものだった。
 断ったものの「あなた剣道の他に昔はバレイとかもやってたのよね?」と、昔話をされ、しかも「成功したら部費を多く入れれるように校長先生に伝えてあげる。防具新しいの揃えたいって言ってたわよね」と、半分脅されてしまったのだ。そのため、その顧問が考えた舞を必死に覚え文化祭で発表した。とても恥ずかしい思いをしたけれど、なかなか好評だったと聞いたので嬉しくもあったの覚えていた。

 それを幼馴染みである千絃は覚えていたようで、昔の躍りをやれというのだ。
 しかも「好きだった」など言われてしまうの、心が高まってしまうのは仕方がないはずだ。頑張って練習したものを「好き」と言ってくれる。あんなにも昔の事を覚えていてくれたのは素直に嬉しかった。

 けれど、剣舞をやるかやらないかは別の話だった。


 「………嫌よ」
 「おまえのあの踊り、さっきのキャラクターにさせてみたくないか?」
 「え………」
 「俺はかなりいいと思うんだけど?」
 「……………」