「俺のうち来るだろ?夕飯買ってある」
 「…………うん。行く」
 「じゃあ、決まりな」


 そう言うと、千絃はシートベルトをつけて車を発進させた。

 響は彼がくれたジャスミンティーのペットボトルを手に持って、熱くなった体が早く冷めるのを祈ったけれど、久しぶりのキスの余韻は落ち着くはずもなかった。
 あれだけでは足りない、そう体が求めてしまっているのを感じ、響の肌はまた赤くなるのだった。





 「ちょっ………ちょっと待って………!」
 「待てないだろ?お前だって同じなはずだ」
 「それはそうだけど………汗かいてるからシャワー浴びたい」
 「俺は気にしない。おまえの匂いだ」
 「………でも……」
 「もう黙って。車の中で可愛く求めてきたのは誰だよ。………さっきみたいに、キス、求めろよ……」



 千絃の部屋に到着すると、千絃はすぐに響を寝室のベットに押し倒した。
 彼の瞳は鋭く光っており、千絃が自分を求めているのがひしひしと伝わってくる。抵抗したものの、響はすぐに彼の言葉に従うことになる。自分も我慢していたのだから。

 千絃は数回キスを落とした後に、すぐに首筋を舐め、かぶりつくように唇をつける。同時に響の洋服を脱がせてくる。
 そこまで来て、千絃は動きを止めた。


 「千絃?」
 「………おまえ、ボディソープ使ってないのか?あの薔薇の。違う香りがする」
 「……使ってない」
 「……そうか………」


 響がそう言うと、少しだけ彼の顔が曇ったのがわかった。響はすぐに「ち、違うの!ちゃんと理由はあるよ」と、言葉を付け足した。


 「だって………あのボディーソープ使ったら、千絃の事を思い出しちゃう。始めは使ってたけど、あなたの事を思い出して、悲しくなってしまうから……だからやめたの………。でも、今日から使える、よね?」
 「…………今日じゃなくて、明日の朝になるだろうな」
 「………ん………」



 千絃は響の柔らかな肌に唇を這わせ、微笑みながらどんどん下へと下がっていく。

 その後は余計な会話などなく、お互いに久しぶりの感触を堪能した。千絃が言ったように、響がお風呂に入れたのは明け方で、「今日も舞台があるのに……」と、少し文句を言いながらも、2人でローズの香りがする風呂場に居られる事がとても嬉しかったのだった。