21話「次の約束」




 それからは毎日が忙しなく過ぎていった。
 千絃達が制作しているゲームが、発売される前から期待度が高く、情報や動画を上げる度に反応が大きく、ネットニュースやSNSで取り上げられる事が多くなっていた。ゲームを作るスタッフにとってはとてもありがたい事で、更にやる気が上がってきているのを響は肌で感じていた。もちろん、響自身も同じだった。まだ、この会社でも、演技者としても新人だが出来る限りの力を出していきたい。そう思っていた。
 しかし、ゲームが人気が出るほど「早く完成させろ」と言ってくるのが上層部だった。
 「キャラクターの準備はまだか」「声優は大物を使おう」「コラボレーションにお金をかけよう」など、要望と仕事が増えていく一方なのだ。響を起用した事での注目度も上がっているのが気になっているようで、響も何かイベントなどに登壇して欲しいと言われていたので、「自分でいいのだろうか?」と思いつつも受け入れる事にした。


 そんな事で、響は沢山のキャラクターのモーションを撮ることになり、毎日撮影場所に籠るようになっていた。もちろん、千絃もモーションの確認や響との共に撮影する事もあった。けれど、ほとんどがPC作業になっており、響と千絃は同じ会社にいるのに会わない事もあった。

 けれど、彼と少しでも話したり、真剣な横顔を見れるだけでも同じ職場というのはいいな、と響は思っていた。