「いや………こわい………止めて………一人にしないでっ!!」


 響は、焦りと不安から叫び声に似た声を上げた。
 けれど、全ては真っ暗闇になり、響の瞳には何も写らなくなった。


 「………千絃……助けて………千絃ーーっっ!」


 そう彼の名前を大声で呼んだ瞬間だった。


 パチッと目が覚めた。
 そこは見慣れない天井と、柔らかく心地いいシーツの感触。けれど、いつもの生地ではない事に気づく。視界がぼやけるなと思い、目を擦ると、手に滴がついた。そこで、自分が泣いていた事に響は気づいたのだ。

 フッと温かさを感じ横を見ると、そこには穏やかな寝息をたてて眠る千絃の姿があった。そこでやっとわかった。
 ここは千絃の部屋であり、先ほどは夢だったのだと。
 随分怖い夢を見てしまった。目の前には千絃が居て、昨日恋人になれたというのに。
 
 響は、思わず彼の体にすり寄り、千絃をもっと近くに感じようとした。彼の鼓動と匂いが大きくなる。それでホッとしていると、「ん………響?」と、頭の上から彼の声がした。どうやら、響が動いたことで目を覚ましてしまったようだ。
 響は「ごめん……」と声を掛けようとすると、千絃はにっこりと笑って「おはよう」と言った。寝ぼけているのか、素なのかわからないけれど、可愛いと思ってしまうほどの笑みに響はドクンッと胸が高鳴った。