「惜しかったなー。でもちょっと進歩したじゃん」


岬の岩場までふたりで戻り、七瀬の助けを借りながらわたしだけ海から上がる。
彼は岩に頬杖をついて、少し嬉しそうに尾びれをぱしゃぱしゃと海面に打ち付けた。

「うん、次の夢にちょっと近付いた気がする!」

「次の夢?」

もう一度深く頷き、わたしは目の前に広がる青を見る。

水平線の向こうへと続く、宝石を溶かしたように眩く澄んだ海。
わたしが二度溺れ、助けられた海。
きみと一緒に人魚を探した海。

そして、10年前からの夢が叶った海。

わたしがこの海で、もうひとつ叶えたいこと。


「いつか、今度はわたしが、泳いで七瀬に会いに行くね」


彼が人となって、わたしに会いにこの町へ来てくれたように。
彼がさみしくなった時に傍に行けるように。
彼がこの先どこへ行ったとしても、またこうして一緒にいられるように。

いつの日か。

この、二本の足で。