メッセージに既読が付いたのは、わたしが橋の下に着いたとき。

 颯ちゃんが河川敷に現われたのは、夕日が落ちて、空に一番星がのぼったころだった。

 黄昏の空は、オレンジ色からうすい水色へと変わるグラデーション。銀色の雲がたなびいている。

「由奈! どうしたんだよ。もう大丈夫なのか?」 

 河川敷を一気に駆け下りてわたしのもとへ来た颯ちゃんは、肩で息をしている。

「颯ちゃん。ひょっとして、学校から走ってきたの?」

「あたり前だろ。こんなとこで待ってるとか……。なんかあったのか?」

『なんかあった』のは、颯ちゃんのほうでしょ?

 軽く、颯ちゃんをにらむ。

「ていうかうちに来てくれればいいのに。こんなとこ来て、風に当たって、またぶり返したらどーすんだよ」

「颯ちゃん、わたしの心配ばっかり」

 つぶやくと、颯ちゃんは決まり悪そうに目をそらして、

「由奈がいきなりおかしな行動に出るからだろ?」

 と、ぶっきらぼうに告げた。

「颯ちゃんの家の人にも、うちの家族にも聞かれずに、話をしたかったの」

 わたしは颯ちゃんの目を見た。