どうして、君のことばかり。

 颯ちゃんは小さくうなずくと、くるっときびすを返して、走っていってしまった。

 なんですぐ帰っちゃうの? 
 いつもみたいに、一緒に遊ばないのかな。

 ふしぎに思ったけど、指輪がきれいで、心がうきうきして。ごきげんで、お母さんに見せびらかした。

「あら? どうしたの? その指輪」
「颯ちゃんがくれたの! お菓子のおまけだって!」
「まあ。よかったね。きのう、指輪ほしいって大泣きしたもんね」

 あらためてそんなふうに言われたら、だだをこねていた自分のことが、すごくはずかしくなった。

 お母さんはくすっと笑った。

「由奈ってば。左手の薬指にはめてる」
「どうして? だめなの?」

 首をかしげると、お母さんは教えてくれた。

「左手の薬指にはめるのはね、結婚指輪よ。お母さんとお父さんもしてるでしょ」

 そして、自分の左手の指輪を見せてくれたんだ。
 きらりと光る、銀のプラチナリング。

 結婚、指輪……。

 颯ちゃんにもらった。

 ふわあっと体温があがって、顔が熱くなった。