――祭り囃子が、聞こえる。
赤い提灯がゆらゆら揺れて、あたりには、浴衣姿の人がたくさん。
わたしも、お気に入りの金魚柄の浴衣を着ている。
妹の香奈はまだ小さいから、ベビーカーに乗っている。
颯ちゃんは甚平を着て、おじさんと手をつないでいた。
「由奈、いい加減にしなさい」
お母さんが怒っている。
だけど、どうしてもあきらめられなくて、わたしは、
「お願い! もう一回だけ!」
と、わがままを言った。
どうしても、欲しいんだもん。
くじ引きの屋台の、真ん中に飾られた、きれいな指輪。
銀色の台座に、赤くて丸い大きな石が乗っている。
お父さんとお母さんにせがんで、何度もくじを引かせてもらったけど、当たらない。
「わかった。じゃあ、これでほんとにさいごだからな?」
「うん」
お父さんと指切りをする。
きゅっと目を閉じて、「指輪が当たりますように」と念じて、くじをひく。……けど。
「はい。あめ玉ね」
屋台のおじさんがにいっと笑った。
また、はずれ。
なんで指輪が当たらないの?
「うう……っ」
涙があふれる。
「しょうがないでしょ。くじなんだから」