頭の芯がぼんやりしている。

 颯ちゃんがあんなに気遣ってくれたのに、雨の勢いが強すぎて、わたしは結局濡れてしまった。

 帰宅してすぐにバスタブにお湯を張って浸かり、からだを温める。

 ずっと、どきどきが続いている。

 乳白色の入浴剤を入れたお湯を、両手ですくう。
 なんだかからだがふわふわしていた。頭がぼうっとしてうまく回転してくれない。

「……くしゅっ」

 また、くしゃみ。
 と、同時に、ぶるっと、全身を寒気が這いあがった。
 熱いお湯につかっているのに、寒い。

 お風呂を出てパジャマを着て、急いで髪を乾かす。
 寒くてたまらないのに頭の芯は熱い。

 今日は両親とも仕事で帰りは遅い。妹の香奈もまだ帰ってきていない。

 わたしはふらふらと階段を上り、二階にある自分の部屋へ。
 押し入れにしまい込んでいた毛布を引っ張り出して、ベッドでくるまった。

 ……寒い。だけど、熱い。

 窓を激しくたたく雨の音。

 同じ傘の下、手を伸ばせばすぐに触れられそうなほど近くにあった、颯ちゃんの横顔。広い肩。

 思い出してしまって、ぎゅっと、目を閉じる。

 隣の家には、颯ちゃんがいる。しかも、颯ちゃんの部屋も二階にある。
 だけど、わたしの部屋と面しているわけじゃないから、窓からおたがいの姿が見えることもないし、窓を開けてやりとりできるわけでもない。

 颯ちゃんは今、何をしているんだろう。

 どうしてわたしは今、颯ちゃんのことばかり考えているんだろう。

 吐く息が熱い。
 妙に心細くて、わたしは、毛布の端っこをぎゅっと握りしめた。

 降りしきる雨の音を聞きながら、わたしは、すうっと、眠りの世界に落ちて行った……。