どうして、君のことばかり。

 もごもごと答えた。

 恥ずかしい。
 わたし、まるで、小さい子どもみたい。

 それに……。颯ちゃんが近い。

 思いがけず引き寄せられるかたちになって、からだがぶつかりそうになってしまった。

 どうして? 颯ちゃんに触れそうだった、からだの右側が、熱を持っている。
 どきどきと……、心臓が鳴っている。

 颯ちゃんと子どもの頃に遊んでいた川に差し掛かった。
 大きな橋を渡っている途中で、ふいに、頬にぽつりと冷たいものが当たった。

「あー……。降ってきたな」

 ぽつん、ぽつん。雨のしずくは落ちてくる。

 颯ちゃんは自分の傘を開いて、わたしに差し掛けた。

「ほら」
「……ん。ありがとう」

 ほんとに、あいあい傘することになってしまった。

 傘をたたく雨の音。
 歩道を歩くわたしたちのすぐそばを、たくさんの車が通りすぎていく。路面の雨水を跳ねとばしながら。