痛くて切ないことも、たくさんあるけど。

 というか、わたしの初めての恋には、痛くて切ないことしかなくて、なにもできないまま、あっという間に散ってしまったけど。

 後悔は、していない。
 絵里の背中を押せたことは、自分の中で誇れることのひとつだ。

「由奈。その……」

 颯ちゃんが、遠慮がちにわたしに声をかけた。

「ん?」

「平気なのか?」

「え? 何が?」

「いや。……何でもない」

 颯ちゃんは、森下くんたちが歩いて行った道の先に、視線をやっている。

「なに、ぼーっとしてるの? 早く帰ろうよ」

 明るく声をかけて、はずむ足取りで、歩を進めようとした……ら。

 いきなり、颯ちゃんがわたしの腕をとって、ぐいっと引っ張った。

「あぶねーって。水たまり踏むとこだったぞ? ほら」

 言われて足もとを見ると、アスファルトのくぼみに水がたまっている……。

「あ、ありがと」