どうして、君のことばかり。

「由奈はほんとに鈍いなあってことよ」

 苦笑すると、絵里はわたしの頭をくしゃっと撫でた。

「大丈夫だよ、三崎は」

「…………」
 なんでそんなこと、きっぱりと言い切れるんだろう。

「絵里は、知らないからだよ」

 颯ちゃんの家のことを。

「何を?」

 首をかしげた絵里。
 わたしはあわてて、「なんでもない」と自分のつぶやきを否定した。

 うっかりこぼしてしまったけど、絵里に詳しい事情を話せるわけもない。
 というか、わたしも詳しい事情なんて知らないわけだけど。

 颯ちゃんにケーキを持って行った日。

 おばさんの体調のことが気になったわたしは、帰宅したあと、それとなくお母さんに聞いてみた。
 颯ちゃんママ、すごく痩せてたんだけど、どこか具合悪いのかな、って。
 お母さんとおばさんは付き合いの長いママ友だから、何か知っているのかもしれないと思ったんだ。
「大きな病気をしているってわけじゃないみたいだから、その心配はないと思うよ」

 と、お母さんは教えてくれた。

「でも、ね……」

「でも……、何?」

「あ。ううん、何でもない。それより颯太くんはどんな感じ? 学校では元気にしてる?」

「? うん。元気、……だけど」

 なら良かった、と、お母さんは言って、そこでこの話は終わった。
 お母さんが強引に違う話題を振ったから。

「何でもない」とお母さんは言ったけど、その、奥歯にものが挟まったみたいな口ぶりに、わたしは逆に「絶対に何かある」と確信してしまった。

 だから……気になる。