「わたし、もう、全然平気だからね?」

 絵里はきっと、わたしが森下くんのことを見ていると勘違いしたんだ。

「でも……」

「ほんとに、わたし、全然引きずってないから。絵里は気にしないで」

 本心だった。

 思ったよりも傷がふさがるのは早くて、絵里と森下くんが口げんかをしながらじゃれあっていても、部活がない日にふたりで下校している姿を見ても、森下くんが絵里のことをいとおしそうに見つめていることに気づいても、わたしの胸は、以前ほど痛まない。

「自分でも、正直、不思議なぐらい」

 つぶやくように告げると、絵里は少し首をかしげて、

「じゃあ、由奈が最近ふさぎ込んでるよう見えるのは、どうして?」

 と聞いた。

「ふさぎ込んでるように見えるの? わたしが?」

「うん。ため息ばっかりついて、ぼんやりしている」

「そう……かな。そんなことないと思うけど」