空は鉛色の雲に覆われている。
 空気は湿気を含んでいて、教室の中はひどく蒸し暑かった。

 最近、すっきりしない天気が続いている。

 今にも降り出しそうで、だけどなかなか降り出せなくて。
 泣きたくても泣けない強がりな空。

 あれから颯ちゃんの話の続きを聞き出せないまま、中間テスト期間に入ってしまって、更に話すきっかけを失ってしまった。

 だけど昨日で、テストは終わった。

 休み時間。颯ちゃんは森下くんとふたりでふざけ合っている。
 森下くんがいつものように颯ちゃんにちょっかいをかけて、颯ちゃんがそれにいちいちこたえている感じ。
 うざったそうな態度をとりながらも、森下くんとじゃれあっている颯ちゃんは、なんだかんだで楽しそうだと思う。

「由奈」

 ぽん、と、肩に手が置かれた。

「どしたの? 元気ない」

「そんなことないよ、絵里」

 笑顔でこたえると、絵里はわたしの視線の先を追いかけて、わずかに表情を曇らせた。

「由奈、……やっぱり、まだ」

「待って、ちがうってば」

 わたしはあわてて絵里の言葉をさえぎった。