お母さんに教えてもらいながら、わたしは、バナナのパウンドケーキを焼き上げた。
バターを白くなるまですり混ぜるところは大変だったけど、そのほかは割と簡たんにできたと思う。次からは自分ひとりでも作れそう。
焼きあがったケーキを型からはずして切り分け、ラップにくるんだ。
本当はおしゃれにラッピングでもしたいところだけど、かわいいワックスペーパーも箱もない。
どうせ持っていくのはお隣なんだし、きっと颯ちゃんはすぐに食べてしまうだろうから、ラップだけでかまわないと思ったんだ。
気まぐれで作ったお菓子を気まぐれにおすそ分けするだけなんだから、ラッピングなんかして気合を入れすぎるのも、なんか違うし。
くるんだケーキの入った紙袋を手に、家を出たのは夕方。
颯ちゃんも部活を終えて帰ってきていると思う。
颯ちゃんの家のインターフォンを押すと、すぐにドアが開いた。
「由奈? どした?」
「あっ……。えっと」
どきっとしてしまう。
出迎えてくれた颯ちゃんの髪が濡れていたから。