教室に入ってすぐ、颯ちゃんの席に目をやった。
 珍しく机につっぷして寝ている。

 ……わたしも、寝不足なんだけど。

 ちょっとだけうらめしい気持ちで、わたしも自分の席につき、かばんから教科書やテキストを取り出して引き出しに仕舞った。

 小さく息を吐くと、わたしは、自分の前髪に手をやって、触れた。

 失敗したと後悔して恥ずかしがっていたくせに、すぐに短い前髪に慣れてしまって、そのうち少し伸びて、切る前とそれほど変わらなくなった。

 時間が経てば、どんな変化にも慣れるし、更に変わっていくことだってできる。

 だからきっと、失恋した痛みにもすぐに慣れる。

 髪が伸びるように、傷口もすぐにふさがる。

 そして、その日は案外近いのかもしれない。